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番外編その2、プラナリアDugesia japonica

ヒドラに続いてクラゲじゃないけど、のシリーズ第二段はプラナリア。かわいらしい名前を持つ今回の主役は、図鑑や教科書ではおな じみのアレです。有名なのはその再生力ですが、面白いのはそれだけじゃありませんよ。

プラナリア




プラナリアって、なんだ

あまりにも有名すぎてあらためて紹介もしにくいのですが。
和名はナミウズムシ。Dugesia japonicaとして学名がつけられたのは1964年のことで、それまではヨーロッパ産のD.gonocephalaと同種だと思われていました。英名ではフラットワームflatworm、平べったい虫、というところでしょうか。
ウズムシという名は体の腹にある繊毛で小さなうずをつくりながら移動するということに由来します。

分類学上は以下のとおり。
扁形動物門Plathelminthes
   渦虫(うずむし)綱Turbellaria
     三岐腸目 Triclada
       サンカクアタマウズムシ属Dugesia
           ナミウズムシ   Dugesia japonica

体長は伸びきったときで20〜30mmぐらい。黒っぽくて頭が三角、背側からでも腹側からも透けて見える目が二つ。イメージ的には陸上のナメクジや海生の ウミウシ(両方とも軟体動物門腹足綱つまり巻貝のなかま)っぽいですが、それよりもっと薄くて平べったい。川底にいることからヒル(環形動物門ヒル綱)と 混同しがちですがまったく違う生き物です。
もっともプラナリアと近縁で名前が紛らわしい「コウガイビル」なんていう陸棲のウズムシの仲間もいるんですが・・・

這うというよりもまるで滑るように水底を移動するようすはまるで人工的な二次元の生物みたい。矢印に目がついたような感じ。しかもその目が・・・より目で三白眼なんです。いつ見てもとぼけた顔のポーカーフェイスなんだけど、決して無表情ってわけじゃない。脊椎動物以外では最も表情豊かな部類に入るんじゃないかな。


どんな生き物?

水のきれいな小川の、川底の石をひっくりかえしてみると・・・いたいた。プラナリアは日本中の川や湖でみつかっています。水のきれいさを示す指標生物としては、4段階評価のうち水質階級1、つまりもっともきれいな水にすむ生き物だととされています。サワガニとかヘビトンボが同じレベルにいるのですが、あれれ、意外にもゲンジボタルが一ランク下の水質階級2なのですね。われらがプラナリアはよっぽどきれいな水を好むようです。飼育下でも水道水の残留塩素や餌の食べ残しによる水質悪化でバタバタと死んじゃうことがありますね。

体制は単純そのもので、体節なし、心臓なし、エラなし、血管なし。ひらべったいから、皮膚から呼吸する酸素で充分からだに行き渡っちゃう。
前述のとおりヒルの仲間とか、ミミズの仲間に間違われて覚えられたりしてるようですが、ミミズもヒルも体節があって血管もある環形動物門です。ほら、ミミズ切ると赤くはないけど血みたいなの出るでしょ?プラナリアやコウガイビルは切ってもちょっとねばねばの体液がにじみ出るかな、という程度です。

消化器官は口と腸と、摂食のための咽頭(いんとう)があるだけ。咽頭はふだん体内にしまいこまれているチューブ状の器官で、餌を食べるときにだけ口からでてきます。その口というのが・・・頭の近くではなくて体の真ん中あたりにあるもんですから、餌を食べるときは人間でいえばヘソあたりからチューブを出してそこから吸い取ってるような異様な光景になります。肛門もないので消化できないものは口から吐き出されます。

神経系はかご型神経系で頭部には申し訳程度の脳ができています。これは無脊椎動物のうちでは最も原始的な脳ですが、体重比ではなんと、ネズミぐらいある、という大きなもの。簡単な学習もこなすぐらい。

でもなんていっても、切られても切られても死なないで再生するのが特徴といえます。まっぷたつに切られてもコマギレにされても死なないどころか、それぞれが再生して完全な個体になっちゃう。いや、それくらいなら実はクラゲのポリプでもヒドラでもできることなんだけど、われわれと同じ左右相称動物で顔があって尻尾もある生き物というところが都合がいいせいか実験用のモデル生物として重宝されているのようですね。





飼うのは簡単すぎるぐらい


丈夫な生き物だけあって、飼うのはほんとにラク、一週間に一度の世話で何年でも維持できちゃう。条件によっては一ヶ月に一度でもいいぐらい。ポイントはきれいな水と適切な水温だけ。

まず飼育容器ですが、実験用に大量に飼育するのでなければ本格的な水槽は必要ありません。数匹を維持するだけなら1リットルほどの空き瓶でも充分。可能ならば同じものを二つ用意しておくと便利。

水道水の残留塩素には弱いので塩素中和剤を利用して水を用意しましょう。「汲み置きの水」や「塩素を除去できる飲料水用の浄水器の水」の場合も過信せず規定量よりやや少なめの中和剤を併用するべきです。止水で飼育する場合は餌を与えたら食べ残しはきっちり除去して水替えするのだけがポイント。

水温は15度がベスト、低いほうは5度、高いほうで25度ぐらい。30度を超えるような夏場には密閉容器で冷蔵庫に入れちゃう。ときどき飼育水だけ交換してれば大丈夫。

餌は週に一度。手抜き飼育なら金魚や熱帯魚の餌で沈むタイプのものがお勧め。自然では水生動物の死骸や水生昆虫・イトミミズなどを捕食しているので市販の冷凍アカムシや乾燥アカムシなどを与えるのが自然に一番近いでしょうか。
実験動物用としては、ニワトリのレバーの小片というのが単一飼料で長期間飼育の実績があるスタンダード。あらかじめ切り分けて冷凍しておくと安上がりで済みそうですが、水を汚しやすいので趣味の飼育にはちょっと向いていないかも。ゆで卵の卵黄も食べてくれるようですがやはり水を汚しやすい。当店ではちょっと一工夫。クラゲやヒドラに与えてあまったブラインシュリンプを水洗いして与えています。

プラナリアは匂いには敏感で、水中に餌が入った瞬間にいっせいに「そわそわ」し始めたと思うと餌に向かって集まってきて、餌にとりつくとお腹からにょろっと咽頭を伸ばして食事の始まり。食べやすい餌だと10分ほどで満腹しちゃう。ここで光に透かしてみると腸の中にびっしり餌が入ってる様子がわかりますよ。三岐腸類の名前のとおり、頭のほうに一本、咽頭を迂回して尻尾の先に向かって2本の腸があって、さらにくまなく体に栄養を運ぶために細かい枝になってて、鯛焼きに例えるなら「尻尾までアンコが入ってい る」状態でしょうか。

止水飼育では餌を与えたら食べ残しの餌を取り除いて、飼育水を交換すること。あらかじめ水温をあわせた水を用意しておくのをお忘れなく。いっそ容器を二つ用意して食べ終わったプラナリアをピペットなどを利用して移動するほうが簡単です。




せっかくだから切ってみようよ


プラナリアだもんねえ。やっぱり切ってみなきゃ。

まず注意を。餌を与えた後は、切っちゃだめ!プラナリアの消化液はすごく強力なので切り口から自分を消化して再生どころか溶けてしまうことがあります。なんせ体じゅう、どこを切っても例の枝分かれした腸があるんですよ!必ず食後数日たってから。ちょっと飢餓気味のほうが再生能力が強くなるともいわれています。

前後二つに切るぐらいなら、よく切れるカッターと、まな板がわりに2枚ほど重ねたろ紙があれば充分。念のため新聞紙か古雑誌を下敷きにしておきましょうか。ピペットでプラナリアをろ紙の上に乗っけたら、体をちょっと伸ばすのを待って、カッターの刃先で引っかくように切るだけ。力を入れすぎないで、すばやく切るのがポイント。初心者向けの切断ポイントは自切で増えるときとおなじ咽頭の後ろの4分の1ぐらいが狙い目。

切っ たあとは、ここがポイントなんだけど、下に敷いたろ紙ごと水槽に持っていって、ピペットで洗い落とすようにして水の中に戻します。もっと細かく、たとえば10等分したり縦に切ったり胴体をくりぬいたりなどの複雑な実験をする場合は、ろ紙の下に氷を置いて低温で動きが鈍くなったところを「手術」します。

水 に戻したプラナリアの破片がすぐに動き回ることにも注目!頭のほうなんか、もう切られたことに気づかないぐらい普通に歩き回っています。でもまだ餌は与えるのはひかえましょう。さらに、破片が小さいと他の個体に共食いされちゃうこともあるのでしばらく別の容器で観察するのが安全です。傷口は1日もたつとふさがって、3日もするとじわじわと再生が始まります。切り口が白く盛り上がって目ができはじめて・・・
って、あんまり詳しく書くのはやめておきましょうね。実際に見てのお楽しみということで。

非常に単純な実験ともいえない実験ですけれども、きっと観察してはじめてわかる驚きがいくつもあるはずですよ。そのなかでも一番不思議な「発見」は、自分で切って再生したプラナリアはどういうわけか、特別に愛着がわいて可愛く感じちゃうっていうことかな。





飼育セット(刃物はついてないけど)


ほんとに簡単にプラナリアについて紹介してみました。まだまだ話したいことはあるんですが、それについてはまたの機会に。


D-001 プラナリア(3個体)生体のみ \1,500(送料別)
D-031 プラナリア(3個体)飼育セット \2,500(送料別)


H-031の飼育キットの内容は以下の通り。
・プラナリア
・乾燥飼料(プラナリアの餌)
・餌用スプーン
・ピペット
・ルーペ
・観察用シャーレ x2セット
・ろ紙        x5枚
・塩素中和剤(水道水のカルキ抜き)


ご注文はこちら、注文のページからどうぞ。




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