●サカサクラゲ
エフィラ
プラヌロイド

ワイングラスで飼うミズクラゲ


エフィラ編の続きです。ワイングラスに限らず、小さなコップ、空き瓶、なんでも工夫しミズクラゲを机の上で飼う方法のご紹介。


ワイングラス?

この飼い方は、当店のオリジナルではありません。かつて鳥羽水族館で開催された「クラゲ教室」で紹介された方法に基づいています。私はこれ行かなかったけど、小さな水槽でもミズクラゲを飼えるんだという事は驚きでした。このショップのコンセプトのルーツでもあります。
実際にはワイングラスにこだわらず、ビーカーでもコップでも空き瓶でもいいんだけど、やっぱりオリジナルに敬意を表して、ワイングラスといこうではありませんか。

ワイシャツのボタンぐらいのサイズのクラゲ

ミズクラゲっていったって、フルサイズのクラゲをコップで飼えるわけではありません。子供のうちの、5ミリから30ミリぐらいのサイズの期間だけ、ちいさな容器で観察しようというものです。
エフィラの時期が終わって、クラゲらしくなってきたな、という状態をメテフィラ、といいます。ちょうど小さなボタンくらい。エフィラのあの歯車みたいな形から、もうすでにりっぱにクラゲの形をしています。とにかく、可愛い、はかない。
この時期のクラゲの飼育にはコップサイズの水槽が一番。ろ過装置をつけた水槽だと、どうしても吸い込み口に巻き込まれちゃうし、餌を与えるのも難しいですからね。

期間限定のわけ

いちばんの理由はもちろん、水温が低いときの方がミズクラゲにとっても飼育者にとってもラク、ということなんです。輸送するにも安全。
なぜかというと、水温が低いとクラゲにとっての時間がゆっくり進むから。我々哺乳類にとっては(例によって一部の例外があるけれども)1日は1日、一年は一年、ですよね。暑かろうが寒かろうが。ところがミズクラゲはあるていどの水温範囲であれば、水温に応じてお腹のすき方も成長速度も変わるのです。つきっきりで餌を与えることが出来るならともかく、仮に1日に一度餌を与えるとして、クラゲの時間が飼い主の時間より早くすすむとなると次に餌をあたえようと思ったら飢え死にしてた、なんてのはかわいそう。それに小さな水槽なので、すぐに水が汚れます。さらに、あまり早く成長されちゃうとその先の準備というものに困ってしまう。とにかく、世話を出来るだけサボって長く楽しみたいなら部屋の中の一番涼しいところで飼うのが一番。

ところでミズクラゲって、海水浴のときによく遭遇するせいかもしれないけど、夏だけのクラゲという誤解があるみたいですが、ほんとは一年中海にいるのです。ミズクラゲのメデューサ(クラゲ相)が生まれるのは、冬の寒い時期。ポリプは水温15度C以下の低温にあうと、それまでの無性生殖を停止して変態を始めます。メデューサとしてのプログラムを開始するのです。それが半年くらいかけて育ったところが、海水浴シーズンのミズクラゲたちなのです。その後もクラゲは育ち続けて翌年の春、成熟して産卵、放精して一生を終えるのが翌年の春。漁港でのクラゲ観察では2月〜5月くらいが一番楽しい時期かな。ポリプから遊離したてのエフィラ、ちょっとそだった子クラゲ、そして一年たって戻ってきたプラヌラをかかえた親クラゲと、順々に、運がよければ同時に出会う季節なんです。

とりあえず、用意するもの

飼育容器(すなわちワイングラスかコップかガラスビン、同じものを2つ以上)
作業用のボウル
海水(無脊椎動物用、と書かれたものがオススメ。)
塩素中和材(人工海水の素といっしょになってる商品もあるから注意)
餌(ブラインシュリンプ)
計量スプーン5cc(人工海水を計る)
計量スプーン15cc(クラゲを掬う、チリレンゲで代用可能)
計量カップ
ピペット
2リットルサイズのペットボトルか、ポリタンク
ジョウゴ(海水をペットボトルに入れるとき使用)

この他、台所にあるようなあらゆる容器や小道具が役に立つことがありますが、基本は以上。海水とブラインシュリンプの卵は、当店販売のポリプ飼育セットにもちょっとづつ付属していますが、人工海水はとにかく大量に必要なので別途購入して作り置きをします。
エアポンプと二又分岐弁があれば、コップの中に弱い水流を作るのに利用できます。飼育容器の中にエアストーンをつけないで直接ブクブクします。気泡が傘に入らないかって?大丈夫、このサイズ(500円玉くらいまで)は、成体の傘の下側のくぼみ(生殖腺下腔、といいます)が発達していなくて、気泡はすぐに傘から出て行きます。

飼育場所ですが、暖房が入るお部屋よりもちょっと寒いくらいの玄関などがおすすめです。意外なところで、トイレの中、なんてのもいいですぞ。

クラゲが到着したら

当店のクラゲはペットボトルに入れて、通常の宅急便でとどきます。すぐに開封して見たいところですが、ちょっとがまん。冷たくなっていることがあるのですぐに暖かい室内にもちこんじゃうと、急激な温度の変化にクラゲが耐え切れないことがあるんです。梱包をあけないでしばらく部屋の中にところに置いてください。目安は30分から一時間くらい、開封してみて、ペットボトルに水滴がつくようなら、すぐまた梱包材にくるんでさらに30分。密閉容器でもクラゲにとっては数日分の酸素がのこってますから、慌てることはありません。
ペットボトルからクラゲを取り出すときは、調理用のボウルを使ってください。静かに、ボウルとペットボトルの両方を傾けてクラゲを海水ごとボウルに移します。さらに飼育容器に海水を入れてクラゲを移すときは、15ccの計量スプーンを使ってください。ボウルにのこった海水はもう使いませんが、ペットボトルに戻しましょう。クラゲが残っていないかちゃんと確かめるためにね。

クラゲは1匹ずつ飼うの?

海で採集してきたクラゲなら、1匹ずつの方がいい。でも今回ご紹介するのはポリプからいっしょに出た兄弟クラゲだから、1つの飼育容器に2〜3匹で飼うのがよろしい。どうしてかっていうと、採集してきたクラゲを狭い所に複数いれておくと、ケンカをしちゃうから。ケンカといっても、とっくみあいや噛み付きあいではないからかえってタチが悪い、クラゲ本人たちはいたって平和主義なのですが、刺胞で相手を刺激しあって弱っていくのです。ところが飼育下で同じクローンのポリプから出た個体同志だと不思議なことに刺胞での刺激がまったくない。相手が自分とそっくり同じ遺伝子を持ってることがわかるみたいで、数匹をいっしょに飼っても問題がないばかりか、一匹が泳ぐと適度な水流ができるためかえって好調な場合があるのです。
兄弟、といっちゃったけれど、一卵性多生児、といったほうがよかったのかな。元はといえば、みんな1つの受精卵、1つのプラヌラから発生してきた道程を思うと、不思議なもんです。さらに、覚えているわけではないのにちゃんと同胞であることを見分ける能力のものすごさ、匂いでわかるんでしょうか。もちろん、我々には見分けはつかない。ヒトは視覚だとか脳ミソに頼りすぎて、大昔に持っていた能力を失っちゃったのでしょうね。クラゲにとっての世界を想像してみるのも哲学的であります。嗅覚と味覚、それにわずかな明暗だけの世界。

海水の作り方

これが大事なところ。
  • 人工海水の説明書をよく読む
  • 説明書どおりの量と方法で、人工海水を水に入れる
  • よく溶けるまでかき混ぜる
  • 一日放置する。水温も合わせる
  • おしまい
ただし、人工海水の説明書は普通、25リットル分なり100リットル分なりを全部一度に溶かすように、となってるものが多いですね。ワイングラス飼育ではそんなにたくさんいりませんから、人工海水の全部の重さを量って、一度に作る量を割り算して使う必要があります。
本当は比重計を使って、正確な濃度の海水をつくるべきなんですが、だいたいの目安としては、計量スプーンで計って1リットルの水あたり25cc分の海水。もしくは966ccの水に34グラムの人工海水(乾燥重量で)。2リットル入りのペットボトルにこの量を入れて、溶けるまでよく振ります。
水の方は水道水でいいのですが、ここも注意、人工海水によって塩素中和材が必要なものと不要なものがあります。こちらも説明書でよく確認してください。
人工海水は空気中の水分をよく吸ってしまうので、購入したらすぐに密閉できるガラス製容器などに移し替えた方がいいみたいです。大袋の方がお得ですが、今回は一度に使う量が少ないから25リットル分、というのが無難かな。かなり高級なものでも千円前後です。

餌はブラインシュリンプ

主食は、いつもの通りブラインシュリンプ。一日に一回くらいが目安、週に1回ぐらいなら断食させても大丈夫。たいていのクラゲ達はこれが大好物ですから、毎日かかさず準備して、孵化したてのを水洗いして与えるのが一番。成長するにつれて、一回の食事量は多くなるけど、だいたい15分から30分で食べきる量を目安にしましょう。食べ残しや、目に見えるゴミはピペットで取り除いてやってください。
余った分は冷凍して、与える時に解凍してから使っても大丈夫。市販の冷凍ブラインシュリンプでビタミンなどを強化したものも、週に1回ぐらいを目安に与えるのも効果的。ただし、冷凍ものを与えたときは食いが悪いし、海水が汚れてしまうのですぐ換水した方がいいみたいです。
食欲が無いな、と感じたら、すぐに換水を。

海水をグラスごと取り換える

ワイングラス飼育の一番のポイントはこれ。小さい容器なら毎日、ちょっと大き目の、500ccくらいの容器であれば、3日に一回くらい、ほとんど全部の海水を取り換えます。同時に、予備の飼育容器の方に取り換え、いままで使っていた飼育容器は洗剤を使わずによく洗って次回に備えます。
海水が白くにごったように見えたら、すぐに換水。そうでなくても、なんとなく海水に粘り気がでてきたような感じがしたらそろそろ換えどきです。新しい海水と見比べてみてください。
クラゲを移すのはいろいろ方法があるけど、必ず海水ごと、というのが一番大事なポイント。魚をすくうような網を使うと、目の粗いものではトコロテンになっちゃうし、細かいものでも触手が網にくっついてちぎれちゃうことがあるのです。基本はスプーンを使って移すのですが、器用な人ならワイングラス二つを両手に持って、古い海水をちょっとずつ捨てながらクラゲを残す、なんていうのが楽かもね。ちょうど卵の黄身と白身を分けるときみたいに。
飼育海水は普通、蒸発してやや濃くなっている為に、換水直後はクラゲが底の方に沈んだように見えますが、あまり心配はいりません。1時間もすればあたらしい海水に馴れて浮き上がってきます。

コップでいつまで飼い続けられる?

だいたい500円玉サイズが目安。このころには小さい容器では1匹ずつに分けて飼育することになるでしょう。
それ以上まで育ったら、ろ過装置つきの水槽をセットしてやるのが一番。もちろん、容器だけ大きくして、海水を毎日のように取り換える、という方法でも可能ですが、きれいな海水を毎日汲みにいけるほど海の近くに住んでる方ならともかく、人工海水で、となるとちょっと経済的にツライ。
水槽は市販のクラゲ専用水槽でなくても、簡単な工夫でクラゲ用に改造することができます。一例としては、クラゲ飼育の大先輩、moon-jellyさんのHP「ミズクラゲの飼育日記」で紹介されている方法。ポイントは3つ、クラゲにろ過装置の吸い込み口と、気泡が触れないこと、水流があること。
もうひとつの問題は、夏場の水温。最高でも25℃以下にしてやるのが理想的なのです。鑑賞魚用クーラーも市販されていますが、一般家庭ならエアコンで常時冷房している部屋に水槽を移す、というのがいちばん手っ取り早いかな。

ここでちょっと、最後まで責任を持って飼う、についてちょっとだけ。本来広い海で暮すべきクラゲを窮屈なワイングラスで飼育するというのはなんだか残酷なようで、商品として販売するにあたっては躊躇するところがあったのですが、あえてご紹介することにしました。
まず、気を楽に持っていただきたい。同じクラゲの分身が、ポリプとして生き続けていることを思い出してください。庭の植木から花を切り取って花瓶に飾っているときぐらいにキモチに余裕があった方がこの手の生き物の飼育は上手くいくものです。ほとんど永遠に飼い続けることが出来るポリプとは違って、あなたがどんなに愛情を込めて育てていても、メデューサの寿命には限りがあっていつかは水に戻る日がやってきます。でも、絶対に、飼育していた生物を海に逃がしたりしないでください。最後の瞬間まで手元において見届けてやってください。
品番 品名 価格(税込) 出荷状態
M-003 ミズクラゲのメテフィラ(2匹 5〜10ミリサイズ)(2個体) \1,800(送料別) お休み中
M-013 ミズクラゲのメテフィラ(2個体)+飼育セット \3,300(送料別) お休み中

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